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2010年3月18日 (木)

読書日記:山田正紀「神狩り2 リッパー」

山田正紀「神狩り2 リッパー」
Photo満を持しての続編。上下段組で400ページ超の大作。眉村卓の大傑作「消滅の光輪」を思い出させるような分厚さに期待も極大。
読み始めてからわずか1週間程度で読み終えてしまった。それだけ読みやすかっ たということは言える。
しかし、読後の充実感は残念ながら薄かった。
「読んで損した」とまでは言わないが、「読んで良かった」とも思えなかった。
なぜか。
通常これだけの分量の長編小説を読んだ場合、主人公やその周辺の人物に対する思い入れが生じるのだが、それが無かった。
理由は、この小説の主人公が不明なため。前作の主人公であった島津は脇役。代わりの主人子は江藤?西村?ユリア?あるいは二人の邪と善の子供?
結局、読み進みながら最後まで登場人物の誰にも感情移入が出来なかった。
 
次に、読み終わっても疑問が疑問として残りっぱなしになっていること。
 これは私の理解力の無さにも起因しているのだろうが、それを差し引いても疑問
 は残る。
 何と言っても一番は古代文字。前作からの物語の発端となったこの古代文字の解
 明こそ、神の領域に達したという人間が最後になすべきことではないのだろうか。
 前作の最後に意味ありげに登場させた火星の運河を神の文字としたことは全くの
 無視。

 2つ目に、いかにも意味ありげに登場させた正邪の名前を持つ子供2人組。
 彼らは結局まともに活躍しないまま、最後だけなにか、神の世界(異次元?)へ
 の道を開けるためにだけ登場してお終い。途中に思わせぶりに何度か登場は
 するけど...

 そして、最後に何と言っても、「神」の正体。
  「神」と「天使」と「脳(海馬と扁桃核と皮質)」そして「リッパー」の関係。
 分かるようで分からない。「神」が人間を創造した時に脳に細工を施し、人間に
 神を感知出来ないようにした(?)。その細工を解除して神を感知出来るするの
 がリッパー?じゃ、リッパーの成分って何?皮質を活性化させるの?
 天使って何?天使は物理的に変体した姿を見せて、残虐な殺人を行う理由は?
 殺害された人は神にとって何か不都合な存在だったの?  
 結局最後にユリアが神の世界に乗り込んでマシンガンを構えてお終いという意味
 不明の結末は何?神はマシンガンで倒れるような存在なの? 
 
 とまあ、色々分からないことだらけの小説だった。
 再読すれば又別の理解が可能なのだろうか?

 そして一番の疑問。「作者の山田正紀は満足したのだろうか?」
 これが30年も追い続けて書きたかったことなのだろうか。
 分からないこと尽くめの小説であった、

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読書」カテゴリの記事

コメント

安部 龍太郎は2冊だけ読みました。「彷徨える帝」「太閤の城」です。
伝奇物として素直に面白く読みました。ただこの2冊以外に手を出していないのは、歴史の解釈し直しという視点がなかったことと、読み終えた後に物語世界から離れがたいという思い入れが沸かなかったことです。
私が高橋克彦を隆慶一郎の後継と目している理由は正にこの2点なのです。
歴史伝奇という物語のスタイルやジャンルから見れば、色あいが異なると思います。
高橋克彦は歴史と伝奇は分けて書いていますよね。
でも彼の書く歴史物は、その地元に根ざした視点で書いているということが大きな理由だと思うのですが、通常の歴史で定説とされていることに真っ向から異を唱え、同じ結果を描いても、その結果に至る過程が独特な解釈によるもので、最終的にはその歴史上の人物の評価は180度変わってしまうのです。
又、描いている歴史上の人物が、実在なのにマイナー。歴史の教科書にまともに名前が出ないような人物に、独特な命を吹き込み、魅力この上無い人物に描ききります。
アテルイも、モレイも、藤原経清も、藤原泰衡も、九戸正実も、とても長大な物語の主人公になれるような知名度はないですよね。彼らの身内として彼らの生を感じながら物語の中で行動をともにしているような気持ちさせられるのです。
小説を読み終えるのが嫌になるほど、その物語の世界に没入させてくれます。
登場人物達との別れが本当につらくなります。
そして、文体。
徹底的に修飾的な描写を省いた表現で、センテンスも短く、非常にテンポ良く読めるのです。
こういった点が、隆慶一郎の小説との共通点として感じている次第です。

実は、眉村卓の小説も、物語世界から離れたくないと思わせてくれるという点では全く共通です。
ジュブナイルSFでは、登場人物達が自分の親友として実在して欲しいと本気で思ったし、司政官では、その物語の舞台となっている架空の惑星に自分が生活しているかのような錯覚に陥らせてくれました。

山田風太郎は一冊だけ読みました。短編集でしたが、他の作品も読みたいと思わせてはもらえませんでした。
ドラマのシナリオを書いている知人からも推奨されて読んだのですが、今一でした。
でも長編物なら又違うのかなという気もしているので、今度読んでみたいと思います。

投稿: CDバカ | 2010年3月22日 (月) 16時40分

どーも、こんばんわ、エル・テッチです。
高橋克彦は、私も好きな作家でわりと呼んでいるほうだと思いますが、全作まではいっていません。作品としては、「総門谷」や「竜の棺」などの伝奇SFなどを中心に読んでいました。SF要素のない作品では、近作とはいいがたいですが、アテルイを主人公にした作品(例によって手元に現物を持たずに書いていて題名が出てきません)が、印象深いです。
高橋克彦は、東北地方、特に岩手にこだわり続ける作家というイメージが強いです。中央のヤマト国家への怨念を根底にした多くの作品に、隆慶一郎と繋がるものを感じることもありますが、隆慶一郎の後を継ぐ作家というイメージで読んだことはありませんでしたので、少し驚きました。
隆慶一郎の後継者はいないと思っていますが、あえて私の視点でいいますと、安部龍太郎でしょうか?安部龍太郎の最初期作、「血の日本史」を読んだとき、なんとなくそんなことを感じたことがあります。この作品は、まだ安部龍太郎が作家として、現在のように認められる前から書き初めていたもので、担当編集者の発案だったようですが、独立した短編の連載で日本通史を描くという、当時新人だった安部龍太郎にとっては、かなり高い壁だったと想像します。私は隆慶一郎に感じる伝奇的要素をこの人に感じたのだと思います。
伝奇といえば、私が真の天才だと思っている作家は、山田風太郎です。
山田風太郎のイメージは、多くの人にとって破天荒、奇想天外、荒唐無稽などの言葉で表わされると思いますが、その代表的存在の忍法帖シリーズは誤解も多いですが、その後の評価の高い明治ものや室町ものなど、いえ、最初期の乱歩の影響下からスタートした伝奇趣味、怪奇趣味の探偵小説時代から、既に唯一無二の個性を発揮していました。
筒井康隆も山田正紀も清水義範も憧憬の思いを持って接していた作家でした。
高橋克彦も山田風太郎の初期短編集「みささぎ盗賊」ハルキ文庫97.9の解説「奇の原点」の中で、収録作の素晴らしさに触れ、これらが20代で書かれたことに思いをはせ「とてもかなわない」と畏敬の念を素直に吐露していました。

投稿: エル・テッチ | 2010年3月21日 (日) 02時44分

エル・テッチさん今晩は。
眉村卓好きって、やっぱり世間にそうそうはいないですか。残念です。
エル・テッチさんも書かれている通り、SFジュブナイル小説が有名ですよね。
私もそこから入りました。最初はNHKの少年ドラマです。「なぞの転校生」を見て、その原作者であることを知って、原作本を読んで、一気にファンになってしまいました。小学生の時でした。
中学生の時、NHK少年ドラマ「未来からの挑戦(原作は「ねらわれた学園」)が人気になり、その原作者が眉村卓であり、その原作本は文庫で読めることをクラスの中に広め、眉村ファン製造を図ったのでした。
で、現在。もはや彼のファンは私の周りにはいません。おそらく名前すら知らないでしょうね。
でも、ここ数年は奥さんとの闘病生活のお話がテレビなどにも取り上げられて、今度は映画化もされるとのことで、ちょっと方向性は違いますが、話題になりそうで、喜んでいます。
ちなみに、「消滅の光輪」「司政官」は彼の最高傑作のひとつだと思います。
前者を最初に読んだのは高校生の時でした。以降、何度も読み返しています。読むたびに感動は深まります。
後者は短編・中編集ですので、「消滅に光輪」ほどの感動は深まりませんが、面白みは十分です。
この司政官シリーズの最後にして最長の作品「引き潮のとき」は読み終えた後は感動のあまりしばらく身動きが出来ませんでした。そして、司政官の世界から離れてしまうのがつらく、直ぐに、「消滅の光輪」を再読開始したりしました。
「消滅の光輪」は泉鏡花文学賞も受賞した、文学としても正当に評価された名作です。ちなみに、SFでこの賞を獲っているのは半村良の「産霊山秘録」です。

隆慶一郎を最初に読んだのは、エル・テッチさんが「出だしが良い」と褒めておられた「捨て童子 松平忠輝」です。
私もこの出だしの一行目にやられて買いました。偶然ですね。
この本で一気に好きになり、あとは講談社文庫を全作、次に新潮文庫全作、他光文社等を経て、未文庫化のハードカバーに行って、どんどん読んでいるときに、隆慶一郎氏が亡くなってしまったのですよね。本当に残念です。
現在の前田慶二人気も隆慶一郎の原作のおかげですしね。本当に残念です。
つい何年か前に、西田敏行主演のテレビ・ドラマ「サンキュー先生」が隆慶一郎の脚本作品と知って、DVDボックスを購入しました。このテレビ・ドラマは中学の時に見た記憶があっただけですので、新鮮な気持ちで見れました。
隆慶一郎の脚本という付加価値抜きでも、十分に質の高いドラマであったことを再認識出来ました。

現在、隆慶一郎の後を埋めることが出来る作家としては高橋克彦です。彼の歴史・時代物の中で描く人物像は隆慶一郎の人物像に非常に似ていると思っています。
最近、出版ペースが落ちて来ているので少し残念です。

最後に、先ほどコメントさせて頂いた中で、Pretenders と Romantics に触れるにを忘れていました。
Pretenders は Nick Lowe がプロデュースにクレジットされているアルバムを持っています。他は正直今一。
Romantics はCBSからですね。一通り持ってます。03年に再結成したアルバム"61/49"を出して買いました。
その時の感想は次の通りです。「80年代前半、アイドルバンドっぽい感じでそっれなりにヒットしていたが、これが10年以上振りでの復活。完全に大人のルーツ・ロックバンドに変身。ハーモニカがブンブンうなるブルージーささえ感じるルーツ・ロック。格好よい。」
ということで、これはお勧めですね。

ではでは。

投稿: CDバカ | 2010年3月20日 (土) 23時25分

眉村卓が好きだという人に初めて会いました。私はあまり熱心な読者ではなく、創元SF文庫で文庫化された「消滅の光輪」も「司政官」ものも気になっていましたが、未読です。私にとって眉村卓は、「狙われた学園」です。これは、筒井康隆の「時をかける少女」、光瀬龍の「夕映え作戦」と並ぶジュビナイルSFの名作です。これらは、NHKの少年少女シリーズで映像化され、もちろん「狙われた学園」は薬師丸ひろ子主演で、「時をかける少女」は原田知世主演で角川映画となりました。また、両作は、その後何度もリメイクされていくことになります。
名前を挙げられた作家の中では、隆慶一郎が私も全作品を読んでいます。全て好きですが、あえて今の気分でベスト3をあげるとすると、順不同で「影武者徳川家康」「かくれさと苦界行」「一夢庵風流記」です。明日になったら変わっているかもしれませんが…。
個別に好きな箇所としては、「捨て童子・松平忠輝」の冒頭の文章が特に好きです。

投稿: エル・テッチ | 2010年3月20日 (土) 02時03分

エル・テッチさん、いらっしゃいませ。読書日記の方にも反応頂き嬉しいです。
最近の通勤読書が山田正紀とは偶然ですね。
私は通勤電車の乗車時間が短いので、土日の出かける時の電車の中と、自宅で音楽を聴きながらの読書です。
以前は新幹線や飛行機での出張が週の半分以上でしたので、この往復の移動時間中は充実した読書時間でした。
週1冊のペースで読めていましたが、現在はその半分のペースです。
私は山田正紀はあまり得意な作家ではなく、読んだ小説の量も少なく、SF小説のみです。
この少ない中で「神狩り」を含めた「神」をタイトルに入れた小説はわりと読んでいたので、今回の「神狩り2」も読んでみたいと思った次第です。
私が得意とする作家は、眉村卓、梶尾真治、高橋克彦、隆慶一郎、恩田陸で、この人達の本はジャンルを問わず全作購入対象です。
半村良はSF物だけは全て購入していましたが、ノンSFは苦手でした。なので半村良は部分的に得意な作家です。
宮部みゆきは時代小説のみです。
これからもペースはゆっくりですが、読書日記も継続していこうと思っています。

投稿: CDバカ | 2010年3月19日 (金) 23時49分

どーも、CDバカさん、こんばんわ、現在、午前2時10分になっています。エル・テッチです。
私は、毎朝、電車2本を乗り継ぎ、更にバスに乗り継いで通勤しています。
この間は、非常に人口密度が高い空間を移動していますので、今年1月に買ったIPhone3GSのIPod機能で音楽を聴いているのみですが、帰りの電車の中では座席に座り、くつろいで文庫本(主に小説)を読んで過ごしています。
最近は、小説を読む頻度が下がってしまい、この通勤時間と就寝前の30分ほどが1日の中で小説を読む時間の大半を占めるようになってしまっています。
実は、私のここ1週間ほどの通勤での読書は、山田正紀の時代小説「帰り船」(朝日文庫2009.10刊)でした。
取り上げられた「神狩り2」は未読ですが、山田正紀はデビュー頃から好きでよく読んでいました。「神狩り」や「弥勒戦争」などの初期長編は、テーマがどでかいわりに分量が少ないので、手に取りやすく気軽に読めますが、今の時代だったら分厚い大作になったかもしれませんね。
私は、山田SFはもちろん好きですが、「謀略のチェス・ゲーム」や「火神を盗め」などのちょっとひねった冒険小説も大好きでした。(近年はパズルタイプの探偵小説でも成功していますね。)
「火神を盗め」は、1人のプロに率いられた素人集団が闘争のプロと戦う話でしたが、任務に着手する前に味方で唯一のプロが死んでしまい、残された素人のみのチームが、弱音を吐きながらも、それぞれの個性を発揮して悪戦苦闘しながら任務を遂行していくミッション・クリア型の冒険小説でした。主要人物の一人が「日本のサラリーマンは強いんだ」みたいなことを言う場面があったかと記憶していますが、山田正紀自身は、学生から社会人経験なしで作家になったような人で、実経験の貯金なしで、収集した資料と空想だけで小説を書いていました。また、書ける人でした。それでも、人気作家になってからは、取材旅行などしたかも知れませんが、頭の中でプロットをしっかり作り、「結末まで完全に決めてからでないと書き出せない。」とどこかで答えていました。平井和正のようなイタコ(憑依型・自称)とは完全対極の人ですね。
山田正紀のこういった資質は、実は中短編向きであると私は思っています。08年12月に扶桑社文庫から刊行された「贋作ゲーム」という短編集は、彼が若いころに書いたミッション・インポッシブル・タイプの作品を集めたもので大変懐かしく読みました。それではどーも眠くなりましたのでこの辺で…。

投稿: エル・テッチ | 2010年3月19日 (金) 02時32分

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