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2010年4月11日 (日)

読書日記:梶尾真治「メモリー・ラボへようこそ」

梶尾真治「メモリー・ラボへようこそ」
Photo_2  
 「記憶」と「おもいで」。
 同じ意味に捉えられそうだけど、良く考えると全く違う。
 「記憶」は事象、「想い出」は感情。そんなことを考えさせられたこの小説。
 「記憶」を題材にした小説では、高橋克彦の直木賞受賞の一連の連作シリーズが
 があり、そこにはどこかホラーの感覚が埋め込まれ、「記憶」と「封印」がセッ
 トになって、その封印を解くことがモチーフ。そして解かれた封印の果てに待ち
 受けていた恐るべき事実とは...そんな雰囲気の連作物語である。
 しかし、カジシンのこの小説(2編の中篇小説から構成)は、「記憶」ではなく、
 「おもいで」がテーマ。「無くした」或いは最初から「無い」そんなマイナスの
 修飾詞が付くような「おもいで」を主軸に、時間と愛情を縦軸と横軸に配した三
 次元小説。
 カジシンは、時間と恋愛という二次元の物語世界を構築し続けてきた。
 デビュー作、「美亜へ送る真珠」で既にそのモチーフは登場している。
 そしてここ数年の小説では制約(副作用?)付きのタイム・マシン「クロノス・
 ジョウンター」を発明し、タイム・パラドックスと恋愛小説の新たな融合を見せ
 てくれた。
 今回の「メモリー・ラボ」にタイム・マシーンは登場しない。制約付きという
 実験性を主張するような道具立てもない。
 「記憶移植」という新たな発明品を登場させた。その装置はその名前の通りの機
 能を問題なく発揮する。あえて言うなら、「脳内タイムトラベル」。
 この小説では、記憶移植によってどうなるのか、というような実験小説的な面白
 さに主軸が置かれていない。「クロノス・ジョウンター」シリーズの「どうなる
 の?」という面白さとは全く異なる趣向である。
 収録された2編の小説の最初の小説と2編目は、登場人物を変えながら、同じ時
 間軸上にある物語で、連続性を持っており、通して一つの長編小説として読むこ
 とが出来る。
 一遍目で、「記憶移植」を受けた人間が移植された他人の「想い出」を探す顛末、
 最後に以外な結末という、いかにも短編的な結末を見せておいて、二編目では、
 長編小説の結末のような、「オチ」ではない、余韻を味わえる「結末」を提供し
 てくれた。
 本当に最後のページの最後の1行に泣けるというのはこのことだと思った。

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