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2010年9月 4日 (土)

読書日記:門井慶喜「おさがしの本は」

Photo 門井慶喜「おさがしの本は」
「極上の探書ミステリ」という帯に書かれた文句に煽られて購入。
しかし、「ミステリ」というのは全くのウソ!!
事件は起きない。あくまで日常の出来事の延長として、ちょっとした波風が立つ程度。
その波風を短編小説として綴ったもの。
私立図書館のレファrンス・カウンター(検索係り)に勤務する中堅職員が、市民からの本探しの依頼を受けて、その本を図書館の中から探し出すというのがその役目。ただ、その依頼内容が変わっていたりして、少しだけナソめいていて、そのなぞ解きが面白みになっている。
しかし、短編を読み進んでいく内に、本探しのエピソードとは別に、もう2本のストーリーが全体を通っていることが分かる。
それは、図書館の廃館問題に巻き込まれていく物語。
そしてもう一つが、主人公の職員が、いかにもお役人風な人格を見せていながら、その人格をより人間らしい人格に変貌していく成長の流れである。
市の財務事情から、廃館が議会のテーマに挙げられ、その廃館を主張する市長秘書室の副室長が図書館の副館長として赴任してきたところから、ノンビリとした日常業務のちょっとしたエピソードの短編から、この廃館を主軸にした長編小説の様相を見せていく。
最後は、副館長と、主人公である中堅職員の議会でのスピーチ対決という山場を経て、結末に向かう。
最後のエピソードでは思わずホロリとさせられ、又、少しだけ、恋愛小説的なムードも登場してきたりして、物語に膨らみを持たせることに成功していると思う。
只、大きな難点が2つ。
先ず一つは文体。
割と軽めの表現の中に、時々思いついたかのような。古い文語調の表現が登場する。
その頻度があまりに少ないのと、表現内容が使い古されすぎていて、興醒めも甚だしい。
どうせなら、もっと徹底的に使って当たり前のこととするのであればまだしも、頻度が少ないので、この箇所だけが浮き上がり、違和感を覚えてしまうのである。
多分、作者はこれを気に入っているのだろうが、完全に失敗だと思う。
借りてきた表現ではなく、自分の言葉で表現し尽くして欲しい。
そしてもう一つは主人公職員の役人としての性格の表現。
機械的で融通の利かない役人という性格付けであるが、この表現が甘い。
彼の役人的な固い面の表現が物足りないのである。常に人間駅な感情側面が直ぐに現れてしまっている。
この辺りの表現は、眉村卓の「消滅の光輪」を見習って欲しい。
どこまでも機械的な役人として振舞うことを是とし、そうすべきという信念を持って行動する行政官が主人公。
しかし、その行動や言動の中で、本人すら気付かない人間的な側面が、ポロっと顔を出してしまうところに、この主人公の人間としての魅力が隠されていて、読者はそこに惹かれる。
今回の小説ではこの部分に物足りなさを感じてしまった。

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