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2010年10月31日 (日)

読書日記(10./31):半村良「僕らの青春 下町高校野球部物語」

半村良「僕らの青春 下町高校野球部物語」
Photo_2  これは紛れも無い新刊。もともとは78年に新聞連載された小説ということで、物語の設定や、登場人物達の境遇、物の考え方には現代とは異なっているものを感じるが、逆に、当時(私は中学2年)の時代の背景としては、確かにそうだったと記憶が蘇る。
受験地獄という言葉が実際に使われ、共通一次試験制度が話題になっていた頃。
そんな時代背景の中で実際に中高生活を送った身としては、この小説の中で語られていることはリアルそのもの。
勿論、進学高に、9人もの野球の天才がたまたま集まっていて、それもポジション毎に秀でた才能を持っている、なんていうご都合主義はあんまりかもしれないけど。
でも、そういう妄想を膨らませ、実際にそうなったら、どうなるんだろうと、胸躍らされて読み進んだことも確かなこと。
そいういう意味では完全なファンタジーなのである。
青春ファンタジー(SF)と定義しても良い。
そんな天才達9人の中に入って、一人凡人が活躍するというのも、爽快。彼の自我が確実に前向きな方向へ成長し、「ダッシュ」というアダナも、「’」という文字に付く記号から「ダッシュ!」という勢い良く飛び出すという意味に変貌を遂げる辺りには、大江健三郎の「新しい人よ目覚めよ」の中で「イーヨーではありません。ヒカリさんです」と言った息子の発言の場面に重ね合わせてしまった。感動を呼ぶ名場面の一つである。
又、この小説では真の悪人が一人も出てこない。みんな心根の良い人ばかり。
読後感も爽やかで、特に最後の方で、優勝目前にしたナイン達への大いにネジくれた応援魂の団結の仕方にも、つい涙がウルッとしてしまった。
ここまで徹底して、理想形を追ってもらうと、「ご都合主義」などという言葉の方が、かえって空々しく感じてしまうほど。
これそ、「真のファンタジー小説」と呼びたい!!
でも、一つだけ、この小説を読み終えて心残りを持ってしまったこと。
それは、一人の生徒だけが、このファンタジーの世界から取り残され、「法律家の厳格な性格の父親を持つ生徒の挫折」という現実的な試練を与えられたままで終わってしまったこと。
彼にも何らかの形での浄化が待っていると思っていたのに、そこだけ残酷だと思ってしまった。

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