読書

2016年1月 2日 (土)

昨年の読書結果です。

昨年の読んだ本の冊数は55冊でした。
56冊目は読み切れず、2/3ページほど残ってしまいました。
SF、純文学、ミステリー、オーディオエッセイ、本のエッセイ、というのが主ジャンルでした。
特に多く読んだのは、高橋克彦、眉村卓、中村うさぎ でした。
本は基本的に新刊で買っているのですが、買うスピードに読むスピードが追いつけず、どうしても買ったままの積読物が繁殖してしまいます。
既読と未読を間違えないように、未読の本には書店でつけてもらったカバーをそのままにして書棚に入れます。
読み終わったらカバーを外してオリジナルの状態で書棚に入れ直すので、一目瞭然です。
そして、書店カバーがついたままで書名すらわからない状態の本の多さに呆れます。
読む順番が回ってくると同じ作家のものを集中して読むことが多くなります。
なので作家が集中しました。
それでも、昨年読んだ本が10年以上前に買ったままの本というのもかなりあり、積読にもほどがあると我ながら呆れます。
特に大ファンである眉村さんの本は、ある程度未読本が溜まってこないと読めません。
なぜなら、読んでしまうと次が無くなるからなのです。
まだ次の本があるぞ、という状態で安心して読むことが出来ます。
結果、眉村さんの本は昨年も数冊出ているのですが、未読で、前世紀の刊行物をやっと読んだのです。
なお、再刊本は安心して読めます。昔の記憶との差も面白がりながら読みました。
そんな中で面白かったと印象に残ったものを残しておきます。

先ずは高橋克彦です。
この人のものも新刊をためてから読んでいます。シリーズ物は特にためます。なので未読分がまだ数冊あります。
舫鬼九郎、バンドネオンの豹、総門谷それぞれの最後の巻分です。
これらを除いて昨年読んだのは次の5作品でした。

高橋克彦「ツリー」
Photo_2Photo_3読んで満足感を味わえた長編SF小説でした。
「竜の棺」のスピンアウト版と言っても良いかもしれない。
高橋節炸裂の文体はスピード感に溢れ心地よいリズムで読み進ませる。
善人、悪人入り乱れての戦闘の果てには、敵、味方の壁が壊れて仲間になってしまうという展開が痛快。
最後は感動!!
とても大らかなアメリカン娯楽映画とか、70年代の「ヤマト」系SFアニメのような映像感の描写で、文学的には評価されないだろうけれども、素直に涙してしまった。

高橋克彦「ジャーニー・ボーイ」
Photo_5爽やかな読後感に浸れる傑作。
実話をベースに、作者独自の解釈を加えて小説化したもの。
歴史冒険小説に分類されるかもしれない。
冒険とは言っても、日本国内なので、荒唐無稽さはない。
でもストーリーの展開にスリルがあり、作者の上手さを感じながら読み進んで行った。
半村良、隆慶一郎、宮部みゆき、そしてこの高橋克彦と、文章とストーリーテリングの上手さには職人的な見事さを感じる。
文章を読むこと自体が快感なのです。
この登場人物達と、もっとずっと一緒に旅をしていたかった。
北海道編(あるのかな?)も是非読みたい!!

高橋克彦「ドールズ 最終章 夜の誘い」
Photo_6途中から目がウルウル。「仲間」の素晴らしさを味わわせてくれた。
最初は、江戸時代の人形師の魂が幼児の中に蘇るというホラーで始まった。
そして、この人形師が日常の中に起こる事件を解き明かす短編シリーズに展開。
このままちょっとライト系なミステリで終わるのかと思ったら、大悪霊が登場し、異次元世界での戦闘物というSFに発展。
このまま大味なSFに発散してしまうのかと思っていた。
この最終章で、見事に収束させてくれた。
ドールズシリーズを頭から再読したいと思わせてくれる大団円でした。
よくぞこれだけの世界を構築してくれたもの。
感動すら覚えた、読んで良かったと思わせる最終巻の長編でした。

高橋克彦「非写真」
Photo_8最新ホラー短編集。2編は既刊単行本「たまゆらり」に収録済みなので、何となく読み覚えがあった。
他は全て初見。
さすがに上手い。
前半はほっこり系、しかし、後半は怖かった。








高橋克彦「東北蝦夷の魂」
Photo_9「風の陣」「炎立つ」「天を衝く」「火焔」の蝦夷4部作を俯瞰した歴史エッセイ。
東北への熱い思いが強く伝わってくる。










次は眉村卓です。
積読物はまだまだあるので安心して読めます。
昨年は再刊物を含めて6冊でした。
今年はもっと読みたいと思っています。

眉村卓「発想力獲得食」
Photo_1020年前の購入本。
ショートショート集なので、最後まで一気読みとはいかず、少しずつ読んでいたのが、途中で、別の長編小説とかに掛かってしまい、途中放置状態なっていたものです。
もうどれを読んだもので、どれが読んでいないのか全く分からなくなってっしまったので、最初から読み直し。
そして今度は途中浮気はせずに最後まで一気に読み切ってしまった。
面白かった。眉村本の魅力を再確認。
次はエッセイ。

眉村卓「大阪の街角」
Photo_1195年刊ですからこれも20年間積読状態でした。
エッセイながら、ショート・ショート的な面白さを感じながら読み進めました。
最後に必ずオチがありました。
いわゆるどんでん返しとしてのオチではないです。
著者の面白い角度から感想のようなもので、これが意外性があって、そう来るか、という感じなのです。
面白かったです。





「迷宮が丘 六丁目 不自然な町」
Photo_12眉村卓作品も収録された児童向けアンソロジー。
児童向けとは言いながら、中学生とか社会人も主人公になっていて、70年代の国産SF短編集の趣もある。
面白かった。









眉村卓「司政官 全短編集」
Photo_14「消滅の光輪」「引き潮の時」以外の「司政官」物の全作品を発表順ではなく司政官の世界での時間軸順に収録したもの。
「司政官」短編群は、SFマガジン掲載時や、単行本で何度も読んでいました。
しかし今回は発表順ではなく、司政官の世界の中の時間軸で読むことが出来、とても新鮮に司政官の世界を味わうことが出来ました。
黎明期から終末期までを順を追って読むことで、あたかも自分がこの司政官の世界の住人でいるかのような錯覚すら覚えました。
各時代の中で描かれる司政官達が直面する事件や問題への対面の仕方が、組織の中の個人というテーマ自体の重みや深みと重なって、現実感を伴って迫ってくるのです。
過去(この小説の世界での)の出来事を頭に入れた状態で読み進めるので、なおさらあの時代はああだったのに、この時代ではこうなってしまうのか、といった感覚でとてもリアルなのです。
司政官シリーズが単行本として刊行された当時には中学~高校生だったこともあり、このテーマの深さを実感としては味わえていなかったことを改めて認識しました。
社会の組織の中で実際に生きている今だからこそ共感も出来、理解も出来る面白さに満ちていました。

眉村卓「眉村卓コレクション異世界篇I ぬばたまの・・・」
Photo_15「ぬばたまの・・・」は高校生の時に最初に読み、その後文庫化された時に、巻末についていた著者年譜が欲しくて文庫も購入したことを今でも覚えています。
それも高校生でしたから、それ切りだったような気がします。
今回、多分30年以上たって読み返し、全く印象が違っていて驚きました。
やはり面白味が増している。感じることの出来た面白さの質が、ストーリー展開の面白さから、主人公の心情に共感出来る面白さに変化していました。
中高生の頃、夢中になった学園物に感情移入した時と同じような面白味を味わえたのです。
司政官シリーズと同様でした。
眉村作品で描かれる、組織の中の人間というテーマを実感として感じられ、共感出来るようになったということでしょう。
全ての眉村作品を読み返してみたい!!

眉村卓「カルタゴの運命」
Photo_16これは傑作の本格SF。
本当に久々に感動、面白さと言える新作のSF小説を読んだという充実感を味わえました。
まるで、70年代、80年代に読んでいた眉村ジュブナイルSFの世界を、主人公が完全な青年として登場する小説世界で味わえました。
青年を主人公とする小説だと、司政官や社会派SFなのですが、これらとは全く違った小説世界でした。
登場人物達の間に芽生える友情感と、互いに別れがたい感情が芽生える物語は、本当に眉村ジュブナイルSFの友情物語の世界なのです。
異界から現れて主人公と関わる登場人物が、ともに同じ世界と同じ時間、そして同じ事件、危機を共有しながら、友情とも言える感情が登場人物達の間に芽生えるのです。
そして終盤に訪れる別れ。
更には、再開を示唆するような爽やかな最後。
堪りません!!
又、SF的道具立てとしての時間理論も面白かった。
異世界人の語るこれまでの謎の答の説明も本当に懐かしかった。
「なぞの転校生」「未来からの挑戦」「天才はつくられる」「つくられた明日」等々の世界。
中学生の時に味わえた感動と同じ質の感動を、35年経ってからも味わえるなんて。
堪能した!!

次は中村うさぎです。
中村うさぎは爆笑買い物エッセイで好きになりました。
しかし、買い物依存から、風俗嬢、ホスト、整形と普通の人が絶対に辿らないような道をたどり、その様子を爆笑かつシビアなエッセイに綴っているのです。
ここまで自分をさらけ出して大丈夫なのかと、面白さを通り越して心配にすらなります。
爆笑エッセイから身と魂を削る純文学の世界が同居している感のある無二の世界でした。
5冊です。

中村うさぎ「さびしいまる、くるしいまる」
Photo_17なんというシビアな爆笑エッセイ。
笑いながら泣き出しそうになりました。
純文学として成立しうる魂の叫びだと思いました。










中村うさぎ「愛か、美貌か ショッピングの女王4」
Photo_18うさぎ節全開!!
遂にホストから整形へ。












中村うさぎ「美人になりたい うさぎ的整形日記」
Photo_19いつもながら度肝を抜かれる内容。笑いと深い洞察に今回も感服。











中村うさぎ「壊れたお姉さんは好きですか?」
Photo_20中村うさぎのあけっぴろげなエロテーマエッセイ。
相変わらず深い考察である。
でも笑いもタップリ。











中村うさぎ・岩井志麻子・森奈津子「最後のY談」
Photo_21ここまであけすけに語ってしまうのか、と痛快この上無い対談集。










ここからはアラカルトです。

野村あらえびす「音楽は愉し」
Photo_22コレクター魂これにあり!!
大正~昭和初期にこんなレコードコレクターが存在したとは。
自分の思いに重なるコレクター的情熱とエピソードの数々。
面白かった!!






北原 尚彦「SF奇書天外」
Photo_23ヨコジュンの「古典こてん」の後継的エッセイ。
文体まで似せた感じであったが、こなれていない感じで、ちょっとつらかった。
でも内容は面白い。
特に入手経緯は最高。
本の内容紹介よりもその入手経緯のエピソードの方に、より興味を惹かれた。






北原 尚彦「SF奇書コレクション」
Photo_24「天外」の続編。これも本を買うエピソードが面白かった。










北原尚彦「古本買いまくり漫遊記」
Photo_25ちょっとはずし感のあるくだけ文体にはやはり馴染めない。
しかし、内容的には期待通りの古本購入エッセイ。
あっという間に読み切ってしまった。









はいだしょうこ「虹色メロディー」
Photo_27NHKのおかあさんといっしょの中でも不思議系を思わせてしょうこお姉さん。
番組卒業後の数多くの民放系バラエティ番組の出演で、その独特のキャラクタを全開させた、しょうこお姉さんのエッセイ集。
宝塚時代のエピソードは爆笑もの。
文章は、正直「作文」といった感じで、まるで幼馴染の知人が書いたものを読んでいるような心地よさでした。
誠実さの伝わる内容でした。




鏡明「二十世紀から出てきたところだけれども、なんだか似たような気分」
Photo_28「本の雑誌」に連載されたエッセイの単行本化。
独特の文体で読みづらさはあったけど、SF好きには興味深い内容でした。











G.ガルシア=マルケス「百年の孤独」
Photo_29およそ35年振りに新装版で読み返したもの。
出だしで、引き込まれ、中盤はダレ、最後また引き込まれました。
やはり最後の一ページがすごい。
全てがこの最後の1ページのために書かれているということを再認識しました。
最初にこの小説を読んだ高校時代には、読むことに精一杯で面白味を味わうまでには至れていなように思います。
マルケスの世界をもっと堪能したいと思い、新潮社のマルケス全作品シリーズを一気買いしてしまいました。
マルケスは一昨年他界しているので、これらの作品を読んでしまうともう新作が読めません。
当分は積読です。

大江健三郎「宙返り(上下)」
Photo_30Photo_31上巻は、読むのが正直苦痛でした。
しかし、下巻も後半になって話が一気に展開し、読むスピードも上がりました。
過去作品の世界から主要人物達が登場し、滑稽さと懐かしさが複雑に絡む物語でした。
大江文学の集大成的な作品と思いました。
でもこのあとにさらに2作品が書かれているので、それらを今年は読もうと思っています。
大江作品は読み始めるまでに、「読むぞ」という決心が要ります。
なので未だ積読状態です。

柴野 拓美(著),牧 眞司 (編集) 「柴野拓美SF評論集 (理性と自走性――黎明より)」
Photo_32これは面白かった。正に日本SF史そのもの。
本のサブタイトルになっている「理性と自走性」のSF論は正直良く分かりませんでした。
あまりに論文チックな書き方で馴染めませんでした。
しかし、SF作品への論評は面白かった。
黎明期のSFマガジン等に掲載された短編一つずつに丁寧な論評がされていて嬉しかった。
眉村作品も多数論評されていて嬉しかった。
柴野さんの眉村評は期待値も含めてとても高かったように思えて嬉しかった。

チャーリー・ラヴェット「古書奇譚」
Photo_33面白かった。シェイクスピアの正体と、偽書(贋作物)殺人事件を絡めた展開でほぼ一気読み。
高橋克彦の浮世絵師殺人事件シリーズと共通性を感じさせる面白さでした。
しかし、シェイクスピアの正体を追及するという歴史ミステリ的な面白さは全くない。
高橋克彦の歴史小説や、伝奇小説、浮世絵シリーズでは、学術論文を小説の形式で発表しているのではないかと言っても良い位に、新たな発見の事実を積み上げているが、この本では完全なフィクションとして、エピソードを作っているよな感じなので、シェイクスピアの正体のナゾに独自の説を立てているという感じではなく、そういう歴史的なナゾを解くスリリングさはないのです。
ミステリとしての意外性も小さく、殺人事件の犯人も想定内でした。
古書薀蓄が多いわけでもないので、ストーリー展開の面白さだけで読めた感じでした。
次の作品にまでは手は出さないだろうなという感じです。

以上です。
今年も、面白く、そして感動出来る作品に出会いたいと思います。
週一冊ペースで行けると良いなあと思います。

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2013年2月26日 (火)

CD購入&聴盤日記(2/26):今日は1枚注文、そして3枚到着。聴盤はMOTHER'S CHILDREN 、LOS AUTONAUTAS 。

今日は一枚予約注文。
隔月で利用している海外のギター・ポップ~パワー・ポップの専門店からの案内メールで、Wanderlustの "Record Time"という12年にひっそりと自主制作されていたCDが再プレスされるので、注文したい人はメールに返信をくれとあり、勿論直ぐに返信。
店主から、OKの返信があり、まずは確保出来たと一安心。

さて、今日の到着物は次の3枚。
Paul Sanchez & the Rolling Road Show "05 May 2012 New Orleans"
Paul Sanchez & the Rolling Road Show "07 May 2011 New Orleans"
Paul Sanchez & the Rolling Road Show "25 Apr 2009 New Orleans"
Paul_sanchez_jazz_festa この3枚はJazz Fest Live シリーズで Cowboy Mouth, Susan Cowsill, The BluerunnersのCDもリリースしていているようである。
3月に入ったら要注文である。 
 
 
 
 
 
 
 

そして今日の聴盤は3枚。
パワー・ポップ物が続く。

MOTHER'S CHILDREN "THAT'S WHO!"
Mothers_children_1 好度:4
ジャンル:パワー・ポップ
感想:70年代パンクの香りを感じさせる演奏であるが、シンプルなロックンロールがメインで、Hurriganes や InMates といったパブ・ロックのようなノリも聴かせる。
分厚くパワフルなサウンドながら、爽快感タップリの演奏である。 
 
 
 
 

MOTHER'S CHILDREN "ARE YOU TOUGH ENOUGH E.P."
Mothers_children_2 好度:4
ジャンル:パワー・ポップ
感想:そしてこちらは、同じバンドの演奏ながら突き抜けるような青春パワー・ポップ。
時折響き渡るビブラフォンの金属音がまた清々しさを見事に演出。
ラウドでぶっといギター・サウンドに明るいメロディーが合体。
爆発的に魅力全開のパワー・ポップが生み出された。 
 
 

LOS AUTONAUTAS "LO QUE QUIERO"
Los_autonautas 好度:4
ジャンル:ギター・ポップ~パワー・ポップ
感想:スペインの優良パワー・ポップレーベル Rockindiana から1stアルバムを出していたバンドの2ndアルバムで10年作。
レーベルは Rockindiana から Audio Matic とい初めて聞くレーベルに移籍してしまったようであるが、演奏はより清涼感とキラキラ感をアップさせている。
メロディーも明るくこのジャケットのような青空ギター・ポップである。

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2013年1月14日 (月)

読書日記(1/14):傅信幸のオーディオ読本「美しい響きの探求」

Photo これはムック本で単行本ではない。形態的には雑誌に近い。
しかし全191ページ、大判の3段組み活字で全編ほぼ活字だけで構成されている。
広告の一切ない編集で、正に「単行本」である。
書かれている内容も、エッセイそのもの。
というわけで、読書日記の対象とした。
内容は、「ステレオ・サウンド」をメインに、「AVフロント」「CDジャーナル」「別冊FMファン」の各誌に掲載された傅さんの単発エッセイ、連載エッセイ等を一冊にまとめたもの。
全体は4章で構成され、第一章が、「ステレオ・サウンド」誌掲載の記事、エッセイ、対談(菅野氏)。
第二章は、「別冊ステレオ・サウンド」誌掲載の製品紹介レポートで、CDプレーヤー、アンプ、スピーカー12機種を取り上げている。
そして第三章では、傅さんの代名詞とも言える80年代のアポジーのスピーカー、90年代オリジナルノーチラスに関する出会いから導入に関わるエッセイで構成。
先ずノーチラスに方については、95年から11年までの「ステレオ・サウンド」誌に掲載されたオリジナルノーチラスとの出会いから導入、そして最近の使いこなしまでの記事で構成。
そして、アポジーの大型リボンスピーカーとの出会いから導入までを、88年の別冊FMファンと、84年~87年の「ステレオ・サウンド」誌に掲載された記事で構成している。
最後の第四章では、「AVフロント」誌に89年から91年まで掲載されたエッセイ8編と、「CDジャーナル」誌に97年~11年までに掲載されたエッセイ17編を収録している。
こちらは、傅さんの交遊録、日常雑感に近いエッセイが多い。

傅さんのオーディオに対する取り組み、考え方、そして日常生活も垣間見える「傅信幸 読本」となっている。
雑誌形態のムック本ではなく、単行本で出して欲しかった一冊である。

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2010年12月 5日 (日)

読書日記((12/5):北森鴻「虚栄の肖像」

北森鴻「虚栄の肖像」
Photo_2  絵画修復師、佐月恭市シリーズの第二弾。
今回は4編の中短編から構成されているが、時系列的に繋がっている物語構成で、一つの長編小説という味方も出来る。
4つの小説の中で絵画修復に絡むなぞとその謎解きの面白さはいつも通り。短編ミステリとして面白く読み進められた。
全体を通して語られる物語の主軸は、主人公佐月の過去の恋人との再会と決別。
決別後の主人公、佐月の行為に、読後感の爽やかさはない。どこか異常さを感じさせる愛情表現となっていて、怖さを感じてしまった。
これは何を狙ったものなのかは分からない。
もし作者が存命であれば3作目で新たな展開を見せてくれるのかも知れないが、それはかなわぬこと。
宙ぶらりんで放り出されてしまったような感じで居心地の悪さだけが残ってしまった。

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2010年10月31日 (日)

読書日記(10./31):半村良「僕らの青春 下町高校野球部物語」

半村良「僕らの青春 下町高校野球部物語」
Photo_2  これは紛れも無い新刊。もともとは78年に新聞連載された小説ということで、物語の設定や、登場人物達の境遇、物の考え方には現代とは異なっているものを感じるが、逆に、当時(私は中学2年)の時代の背景としては、確かにそうだったと記憶が蘇る。
受験地獄という言葉が実際に使われ、共通一次試験制度が話題になっていた頃。
そんな時代背景の中で実際に中高生活を送った身としては、この小説の中で語られていることはリアルそのもの。
勿論、進学高に、9人もの野球の天才がたまたま集まっていて、それもポジション毎に秀でた才能を持っている、なんていうご都合主義はあんまりかもしれないけど。
でも、そういう妄想を膨らませ、実際にそうなったら、どうなるんだろうと、胸躍らされて読み進んだことも確かなこと。
そいういう意味では完全なファンタジーなのである。
青春ファンタジー(SF)と定義しても良い。
そんな天才達9人の中に入って、一人凡人が活躍するというのも、爽快。彼の自我が確実に前向きな方向へ成長し、「ダッシュ」というアダナも、「’」という文字に付く記号から「ダッシュ!」という勢い良く飛び出すという意味に変貌を遂げる辺りには、大江健三郎の「新しい人よ目覚めよ」の中で「イーヨーではありません。ヒカリさんです」と言った息子の発言の場面に重ね合わせてしまった。感動を呼ぶ名場面の一つである。
又、この小説では真の悪人が一人も出てこない。みんな心根の良い人ばかり。
読後感も爽やかで、特に最後の方で、優勝目前にしたナイン達への大いにネジくれた応援魂の団結の仕方にも、つい涙がウルッとしてしまった。
ここまで徹底して、理想形を追ってもらうと、「ご都合主義」などという言葉の方が、かえって空々しく感じてしまうほど。
これそ、「真のファンタジー小説」と呼びたい!!
でも、一つだけ、この小説を読み終えて心残りを持ってしまったこと。
それは、一人の生徒だけが、このファンタジーの世界から取り残され、「法律家の厳格な性格の父親を持つ生徒の挫折」という現実的な試練を与えられたままで終わってしまったこと。
彼にも何らかの形での浄化が待っていると思っていたのに、そこだけ残酷だと思ってしまった。

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2010年10月24日 (日)

読書日記(10/24):梶尾真治「ボクハ・ココニ・イマス 消失刑」

梶尾真治「ボクハ・ココニ・イマス 消失刑」
Photo これはこれまでのカジシン流のリリシズムを期待して読むと、良い意味でも悪い意味でも裏切られる小説である。
物語は非常にシンプルなアイディアのSF。これまでのような「時間」をテーマにしたSFではない。
ある意味古臭いとすら思える20世紀文学のメインテーマ「人間存在の不安」を主軸に置いている。
「他人から認知されない存在としての自分」というモチーフで、かなりアプローチは異なるが、安部公房の「箱男」を思い出してしまった。
物語は、障害事件を起こしてしまった主人公が、懲役刑の一つとして、刑期短縮をバーターに、「消失刑」という実験刑を受け入れることから始まる。
孫悟空の「緊箍児(きんこじ)」のような機能をもつリングを首に掛けさせられ、その輪が作動すると他人の目にはその姿が一切見えなくなるというもの。更に、自分の存在を知らせるようなあらゆる行為に対しては、輪が首を絞めてその邪魔をする。
そして刑期が終了すると自動的に輪が外れるという前提。
そして、何とか孤独に耐えながら刑期を終えようとしたとき、ある事故によって、刑期が終了しても輪が外れなくなってしまうというもの。
さて、このピンチをいかに切り抜けるのか?というアイディア小説かと思って読み進めたが、単純にそうではなかった。
なぜか突然この主人公は超能力に目覚め、テレパシーで、或る女性との交信が可能になってしまう。
大して時間の経緯もエピソードもないまま、なぜか主人公はこの女性に恋をしてしまう。この辺りかなり無理のある展開である。そして、実はその女性が誘拐・監禁されていて、命の危険にさらされているということが、テレパシーの交信によって分かる。
さて、他人とのコミュニケーション手段を一切奪われたこの主人公はいかにしてこの女性を救い出すことが出来るのか。
結局、物語の最後では、この女性を救出したあと、この主人公にも救いが訪れるものと思って読んでいったが、そうはならなかった。
ハッピー・エンドを迎えることは出来るのか、それとも永遠に他者とのコミュニケーションを遮断され、姿も消したままとして生き続けるのか、読者の想像に委ねてしまうというような、何ともスッキリとしない結末なのである。
又、小説の中に出てくるエピソードでも、これまでのカジシン小説ではあまりお目にかかれないような、理不尽で残虐な殺人シーンも登場するなど、これまでの作品とはかなり異なった趣の小説となっている。
読後の涙も今回は無かった。
ん~、難しい。

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2010年10月21日 (木)

CD聴盤日記(10/21):今週到着物の聴盤開始。Paul Kelly。

Paul Kelly - The A To Z Recordings(8CD Hard-Cover Book)-
Paul_kelly 好度:4
ジャンル:ルーツ・ロック~フォーク・ロック
 

 

 

 

 

 

 

 
 
感想:このブックスタイルのCD8枚組は、只のベスト盤ではなく、Paul が
   "A To Z Shows"と題して行ってきたライブコンサートの模様を収めたもの
   であった。
   完全なアコーステッィックセットでのライブで、ドラムレス。
   ただ、アコギ一本の単独ライブということではなく、複数のプレーヤー
   がエレキギターやピアノ等で参加しており、結構華やかさのある演奏と
   なっている。
   曲の収録が曲目のアルファヴェット順というのが特徴。
   80年代の楽曲が結構多く、聴き馴染んだ曲が多い。
   楽曲自体のメロディーの良さ、Paul の歌の上手さ、ギターの綺麗な響き
   の音色が見事に融合した演奏となっている。
   今日は8枚中3枚まで聴いた。アルファヴェットの"H"までである。
   4枚目は"I"から。どんな曲が出てくるか楽しみ。

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2010年10月17日 (日)

読書日記(10/17):ジョン・ダニング「愛書家の死」

ジョン・ダニング「愛書家の死」
Photo 元警官にして古書店主、クリフ・ジェーンウェイを主人公にした古書絡み殺人事件のミステリシリーズの最新作第五弾。
翻訳物の中では例外的に読みやすい文章で、スラスラと読み切ってしまった。
回りくどい表現が少ないことと、登場人物が比較的少なめであることも要因の一つ。
あとはやはり、物語進行の上手さ。
ただ、内容的には、今回は書物関連の面白さは希薄で、競馬がメインシチュエーション。
競馬好きには面白いエピソードや薀蓄が散りばめられていそうであるが、競馬に全く興味のない人には面白さ半減かもしれない。
これまでの作品では、書物にまつわるエピソードや薀蓄、さらには、ビブリオマニアの生態といった表現に多くの魅力を感じていたので、そういう意味では期待ハズレ的な度合いは大きい。
前作では、ハードなアクションシーンに多くの枚数を費やし、今作では競馬。
作者は徐々に書物関連の薀蓄を枯渇させてきているかも知れない。
読みやすさと話の展開の上手さ、そして、ミステリーとしての犯人に意外性等、最後まで緊張感を持って読ませるだけの腕を持っているだけに、もう一度、書物に関わる、或いはまつわる異常な世界を描いて欲しい。

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2010年10月10日 (日)

読書日記:宮部みゆき「おそろし 三島屋変調百物語事始」

宮部みゆき「おそろし 三島屋変調百物語事始」
Photo 「孤宿の人」以来の宮部時代小説である。
「孤宿の人」が色々疑問の残る消化不良気味の小説だっただけに、この小説は期待と不安が半々だった。
しかし、読み終えて素直に面白いと思った。又、途中でこらえきれずに涙した場面もあり、疲れた心を浄化してくれる効果も十分な小説となっている。
一見短編集のような形態を取っているが、実は短編集ではなく、長編小説の中のエピソードの一つ一つであることが分かる。
各章に分かれて語られたエピソードが最終章の中で一つにまとまって物語り全体を一気に終息に向かわせている。
只、一番のナゾである「家」の主とは何者だったのか、具体的な描写や説明が省かれ、読者の想像に委ねられてしまった。
又、主人公である「おちか」は、物語の終焉に向けて、自分を解き放てるような展開に身を置いていたにも関わらず、最後に再び大きな問題を「家の主」から投げ返され、自己の解放には至れなかった。これを深いと見るか、単なる続編へのつなぎと見るかは、今年出版された続編を読んでみて判断したい。
いずれにせよ、素直に面白いと思いながら一気読みに近い形で読み切れてしまったのは事実である。

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2010年9月19日 (日)

読書日記:篠田真由美「緑金書房午睡譚」

篠田真由美「緑金書房午睡譚」
Photo_2  腰巻の「表と裏の世界をつなぐ奇蹟の古本屋」という何とも魅惑的なあおり文を目にし、手に取ってみたら、作者は「龍の黙示録シリーズ」の篠田真由美ということで迷わず購入したもの。
古本屋を舞台に、書物にまつわるナゾを題材にしたファンタジー・SFを期待して読み進めた。
通常は探書がテーマで物語は進行するのであるが、この小説は違った。先ず書物自体はほとんど登場せず、この古本屋を取り巻く人々、動物(ネコ)が物語りの進行の中心。
そういう意味では書物の薀蓄とか、不思議ないわれとか、書物に取り付かれた人々(ビブリオ)の狂気や狂喜といった、本マニアの期待する展開は無いので、そういう意味では非常に肩すかしな感じである。
物語は、登校拒否の女子高校生が、父親(母親は亡くなったという設定)の海外渡航を機に、母方の遠い親戚筋にあたる古本屋に一時身を寄せるということからスタートする。
そして、期待通りこの古本屋は非日常の存在として、色々な顔を見せる。古本屋の主人も、その飼い猫も、そして、主人公の女子校生に関わってくる人々も。
色々と思わせ振りなナゾや、不思議なエピソードが色々語られるが、この小説を最後まで読んでもスッキリとした解答は提示されず、この小説自体がプロローグ的な位置づけであるようなことを、作中の最後の方で小説の語り手の一人によって語られる。
読了して抱いた印象は、ジブリ系のファンタジー。
決して面白くないわけではないが、非常に軽い感じで読後の充実感は希薄。
もっと骨太で本好きマニアの心を満たしてくれるような小説を期待しただけに、ちょっと残念な小説であった。

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